概要
サクラ(桜、旧字体:櫻、英:Cherry blossom、Japanese cherry、Sakura)は、バラ科サクラ亜科サクラ属(スモモ属とすることもある)の落葉広葉樹の総称。またはその花である。一般的に俳句等で春を表現する季語に用いられ桜色と表現される白色や淡紅色から濃紅色の花を咲かせる。
サクラはヒマラヤ原産と考えられ、ヒマラヤザクラの2万5000年前の化石がある。ユーラシア大陸中南部から、シベリア、日本、中国、米国・カナダなど、主に北半球の温帯に広範囲に自生している。歴史的に日本文化に馴染みの深い植物であり、その変異しやすい特質から特に日本で花見目的に多くの栽培品種が作出されてきた。このうち観賞用として最も多く植えられているのがソメイヨシノである。鑑賞用としてカンザンなど日本由来の多くの栽培品種が世界各国に寄贈されて各地に根付いており、英語では桜の花のことを「Cherry blossom」と呼ぶのが一般的であるが、日本文化の影響から「Sakura」と呼ばれることも多くなってきている。
サクラの果実はサクランボまたはチェリーと呼ばれ、世界中で広く食用とされる。日本では、塩や梅酢に漬けた花も食用とされる。サクラ全般の花言葉は「精神の美」「優美な女性」、西洋では「優れた教育」も追加される。桜では開花のみならず、散って桜吹雪が舞う雅な様を日本人の精神に現した。
国の天然記念物に指定されているサクラは、沖縄県から東北地方まで25都道府県に39件あり、このうち狩宿の下馬ザクラと大島のサクラ株は特別天然記念物に指定されている。
語源
「サクラ」の語源については以下の説がある。
- 春に里にやってくる稲(サ)の神が憑依する座(クラ)である。これは天つ神のニニギと木花咲耶姫の婚姻譚による。
- 「咲く」に複数を意味する「ら」を加えたものとされ、元来は花の密生する植物全体を指した。
- 富士の頂から、花の種をまいて花を咲かせたとされる、「コノハナノサクヤビメ(木花之開耶姫)」の「さくや」をとった。
「桜」という漢字は、中国では「桜桃」(サクランボの樹)を意味する。日本で一般に「サクラ」といえば、花が葉に先立って開き、派手で美しい種類(サトザクラ、オオシマザクラ、ヒガンザクラ、ソメイヨシノなど)がまず想起される。サクラの栽培種は里桜とよばれるが、これに対する山桜(ヤマザクラ、オオヤマザクラ)があり、名の通り山野に自生して、花と葉がほぼ同時に開き、花色は白、または、赤みを帯びており、全体として里桜よりも地味なことが特徴である。
野生種の分類
野生種のサクラとは
現在の生物学では、独立した種(species)と見なされるためには、その種の中の個体に遺伝的多様性があり、個体が互いに交配して子孫を残すことができている一定規模の集団でなければならない。このため野生で自生している特定の種類のサクラがあったとしても、それが即ち独立した野生種とみなされるわけではない。また種間雑種であったり、種の下位分類の変種(variety)や品種(form)であったり、全く異なる分類体系となる野生種から選抜・開発された栽培品種(cultivar)は、独立した種の数に含めない。
サクラ属(狭義のサクラ属)とスモモ属(広義のサクラ属)
サクラ類をサクラ属(Cerasus、ケラスス)に分類するか、スモモ属(Prunus、プルヌス)に分類するか国や時代で相違があり、現在では両方の分類が使われている。ロシア、中国、1992年以降の日本ではヤマザクラやセイヨウミザクラなどサクラのみ約100種をサクラ属(Cerasus)として分類するのが主流である(狭義のサクラ属)。一方で西欧や北米では各種サクラとスモモ、モモ、ウメ、ウワミズザクラなど約400種を一括してスモモ属(Prunus)として分類するのが主流である(広義のサクラ属)。これは比較的サクラ類の多いロシアや中国ではサクラ類を独立した属として分類していたのに対し、伝統的にサクラ類の少ない西欧と北米ではサクラ類をスモモやモモやウメなどと一括して分類していたためである。日本の科学は西欧や北米の基準に合わせる事が多かったため従来はサクラ類をスモモ属(Prunus)としていたが、1992年の東京大学の大場秀章の論文発表以降は、実態に合ったサクラ属(Cerasus)表記が主流である。
西欧と北米式のスモモ属(Prunus)による分類法
スモモ属(Prunus)は約400の野生の種(species)からなるが、主に果実の特徴から5から7の亜属に分類される。サクラ亜属 subg. Cerasus はその一つである。サクラ亜属は節に分かれ、それらは非公式な8群に分かれる。このうちサクラ亜属には100の野生の種(species)がある。
サクラ属であり、やはり名前に「サクラ」と付くイヌザクラ、ウワミズザクラなどはウワミズザクラ亜属 subg. Padus(もしくはウワミズザクラ属 Padus)であり、サクラ亜属ではない。かつてはニワザクラ、ユスラウメなどを含むユスラウメ節 sect. Microcerasus もサクラ亜属とされたが、Krüssmann (1978) によりニワウメ亜属 subg. Lithocerasus に分離された。分子系統からは、ニワウメ亜属はサクラ亜属とは別系統であり、しかもスモモ亜属/モモ亜属 Prunus/Amygdalus alliance 内に分散した多系統という結果が出ている。ただし、サクラ亜属をサクラ節 sect. Cerasus(通常のサクラ亜属)とニワウメ節 sect. Lithocerasus(ニワウメ亜属とウワミズザクラ亜属?)に分ける資料もある。
日本に自生する野生種
日本に自生するサクラのうち、現在の生物学上で独立した野生種(species)と認められるのは次の11種、もしくはカンヒザクラを除いた10種である。このうちクマノザクラは2018年に発見された種で、オオシマザクラ以来約100年ぶりに発見されたサクラの基本野生種である。日本人は歴史的にこれらの野生種とその種間雑種からサトザクラ群に代表される少なくとも200品種以上(分類によっては600品種以上、または800品種)の栽培品種などを生み出して花見に利用してきたのである。
- オオシマザクラ (Cerasus speciosa, P. lannesiana var. speciosa) - 日本固有種
- ヤマザクラ (Cerasus jamasakura)
- オオヤマザクラ (Cerasus sargentii)
- カスミザクラ (Cerasus laveilleana, P. verecunda)
- エドヒガン (Cerasus spachiana, Cerasus itosakura, P. pendula f.ascendens, P. subhirtella var. ascendens)
- マメザクラ (Cerasus incisa) - 日本固有種
- タカネザクラ (Cerasus nipponica)
- チョウジザクラ (Cerasus apetala) - 日本固有種
- ミヤマザクラ (Cerasus maximowiczii)
- クマノザクラ (Cerasus kumanoensis) - 日本固有種
- カンヒザクラ (Cerasus campanulata) - 人為的に持ち込まれて野生化した疑義あり
種間雑種
サクラはそれぞれの野生種の中で交雑を行っているが、種の枠を飛び越えて種間でも交雑することがあり、そこから有用な個体が生まれて栽培品種として見出されて花見に利用されてきた。
Cerasus Sato-zakura Group = サトザクラ(オオシマザクラを中心とした複雑な種間雑種により生まれた栽培品種)
- C. × yedoensis = エドヒガン × オオシマザクラ、代表和名:ソメイヨシノ
- C. × sacra = エドヒガン × ヤマザクラ、代表和名:モチヅキザクラ
- C. × kashioensis = エドヒガン × カスミザクラ、代表和名:カシオザクラ
- C. × nudiflora = エドヒガン × オオヤマザクラ、代表和名:サイシュウザクラ(王桜)(韓国済州島のサクラだが日本に標本があるため掲載。)
- C. × occultans = ヤマザクラ × オオシマザクラ、代表和名:カズサザクラ(存在するが、種間雑種として正式に発表されていない学名および和名)
- ヤマザクラ × カスミザクラ(種間雑種として存在するが、正式に発表されていない)
- ヤマザクラ × オオヤマザクラ(種間雑種として存在するが、正式に発表されていない)
- C. × subhirtella = マメザクラ × エドヒガン、代表和名:コヒガン
- C. × fruseana = マメザクラ × ヤマザクラ、代表和名:ミノブザクラ
- C. × yuyamae = マメザクラ × カスミザクラ、代表和名:フジカスミザクラ
- C. × parvifolia = マメザクラ × オオシマザクラ、代表和名:コバザクラ(フユザクラ)
- C. × miyasakana = マメザクラ × タカネザクラ = ヤツガタケザクラ(存在するが、種間雑種として正式に発表されていない学名および和名)
- C. × chichibuensis = チョウジザクラ × エドヒガン、代表和名:チチブザクラ
- C. × yanashimana = チョウジザクラ × ヤマザクラ = 代表和名:ナルサワザクラ(存在するが、種間雑種として正式に発表されていない学名および和名)
- C. × tschonoskii = チョウジザクラ × カスミザクラ、代表和名:ニッコウザクラ
- C. × mitsuminensis = チョウジザクラ × マメザクラ、代表和名:チョウジマメザクラ
- C. × oneyamensis = チョウジザクラ × オオヤマザクラ、代表和名:オネヤマザクラ
- C. × compta = カスミザクラ × オオヤマザクラ、代表和名:アカツキザクラ
- C. × shikamae = カスミザクラ × ミヤマザクラ、代表和名:ミヤマカスミザクラ
- カスミザクラ × オオシマザクラ(種間雑種として存在するが、正式に発表されていない)
- カスミザクラ × タカネザクラ(種間雑種として存在するが、正式に発表されていない)
- C. × kanzakura = カンヒザクラ × ヤマザクラ、代表和名:カンザクラ
- C. × kanzakura = カンヒザクラ × オオシマザクラ、代表和名:カンザクラ(カワヅザクラなど存在するが、種間雑種として正式に発表されていない学名および和名)
- カンヒザクラ × マメザクラ(種間雑種として存在するが、正式に発表されていない)
- C. × kubotana = タカネザクラ × オオヤマザクラ、代表和名:タカネオオヤマザクラ
- C. × katonis = ミヤマザクラ × オオヤマザクラ、代表和名:シンエイザクラ
栽培品種と品種改良
サクラは突然変異が多い植物であり、樹形、花期、花と花弁の付き方・数・形・大きさ・色、実の増減、耐候性、病害虫への強靭性などで新しい特性が発現しやすい。このため野生のサクラの中から鑑賞や食用に有用な突然変異した個体や種間雑種で望ましい特性を持った個体を選抜して育成し、これを接ぎ木や挿し木で増殖することで様々な栽培品種が広まっていった。日本では主に、花付きが多く、一輪の中の花弁が多く(八重咲き)、花の色も見栄えがするなどの鑑賞目的で品種改良が進んだのに対し、西欧では実をより有用な食品にするため、実を大きく、収穫量が多くなるような品種改良が行われてきた。
日本における栽培品種と品種改良
日本に自生する野生種のサクラは上記の10種、もしくは11種(species)であり、世界の野生種の全100種(species)から見るとそう多くはない。しかし日本のサクラに関して特筆できるのは、この10もしくは11種の下位分類の変種(variety)以下の分類で約100種の自生種が存在するほか種間雑種も自生し、古来からこれらの野生種から選抜・開発してきた栽培品種(cultivar)が少なくとも200種以上存在し、名前が付けられている品種は800種類存在すると言われており、世界でも圧倒的に多種多様な栽培品種を選抜・開発してきた事である。
日本人はこれら野生の種が他の種と交雑したりしながら誕生した突然変異個体と優良個体を選抜・育成・接ぎ木などで増殖してそれを繰り返すことで、多種の栽培品種を生み出してきた。エドヒガンやヤマザクラ、オオシマザクラなどは比較的に変性を起こしやすい種であり、特にオオシマザクラは成長が速く、花を大量に付け、大輪で、芳香であり、その特徴を好まれて結果として栽培品種の基盤の親となって多くのサトザクラ群を生み出してきた。2014年に発表された森林総合研究所の215の栽培品種のDNA解析結果により、日本のサクラの栽培品種は、エドヒガンから誕生したシダレザクラのように一つの野生種から誕生した存在は稀で、多くがオオシマザクラに多様な野生種が交雑して誕生した種間雑種であることが判明した。なおソメイヨシノはオオシマザクラを親とするがサトザクラ群には含めない。
生態
日本では、ほぼ全土で何らかの種類が生育可能である。様々な自然環境に合わせて多様な種類が生まれており、日本においてもいくつかの固有種が見られる。たとえばソメイヨシノの片親であるオオシマザクラは伊豆大島など、南部暖帯に自生する固有種とされる。日本では少なくとも数百万年前から自生しているとされ、鮮新世の地層とされる三朝層群からムカシヤマザクラの葉の化石が見つかっている。
全てではないが、多くの種に共通して見られる特徴を挙げる。雌雄同株であり、中高木から低木程度の大きさである。若い樹皮は光沢がありカバノキにも似た水平方向の皮目が出来、この部分は細胞に隙間が生じて呼吸孔になっている。古くなると皮目が消えて表面から徐々に細かく風化していく。葉の形は楕円形であり、枝に互生し、葉の縁はギザギザ(鋸歯)になっている。葉に薄い細毛が生えるものも少なくない。葉は秋になると紅葉する。葉の中にクマリンがある。根は浅く水平に広がり、ここから新たな茎(ひこばえ)がしばしば生え、不定根も良く発生する。
サクラは木を傷つけるとそこから腐りやすい性質を持つ。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という諺もある。このため、花見の宴会でサクラの木を折る観光客の被害によってサクラが弱ってしまうこともある。しかし適切な剪定は可能である。本来、特に自生種は病害にも害虫にもそれほど弱くはないが、人為的に集中して植えられている場合や人工的に作られた品種はこれらに弱くなる場合もある。
長寿な種のエドヒガンとヤマザクラと、エドヒガンの遺伝子を受け継いだ広義のシダレザクラに属する栽培品種に古木として知られる名桜が多い。日本三大桜がいずれも樹齢千年を超える老古木となっているほか、五大桜も古木が多く、内神代桜は樹齢が1800年を超えているとされる。それ以外にも有名で長寿の一本桜が多く存在する。
花
花弁の色サクラの花弁の色は一般的に白色から濃い紅色までのグラデーションの範囲にあり、例外的に黄色のウコンや緑色のギョイコウなどがある。この紅色系の発色はアントシアニンという色素によるものであり、紅葉や若葉の赤系の色もアントシアニンの作用である。アントシアニンの合成には低温と紫外線が必要なため、温暖な地域や年、屋内での育成は白色が強い花弁となりやすい。そのため、クローンであり同じ特質のソメイヨシノでも、温度環境の地域差により西日本より東北の個体の方が紅色が濃いと言われたり、温暖化による年差により昔と比べて白くなっていると言われがちである。また開花から散るまでの色の変化もアントシアニンの密度の変化によるものであり、つぼみの紅色は開化と共にアントシアニンの密度が薄くなって花弁が白くなっていき、散り際には花弁で新たに合成されたアントシアニンが花弁や雄蕊やめしべの基部に集まって赤くなっていく。
花弁の数花を観賞する栽培品種として好まれたため様々な姿の花が見られ、花びらの数は五枚から百数十枚まで幅広い。サクラに限らないが用語を挙げる。花弁が五枚までのものを一重、五枚から十枚のものを半八重、十枚以上の花弁を持つものを八重といいサクラの場合はヤエザクラと称している。また、花弁が非常に多く、一枚一枚が細長い場合、菊咲きと称する。さらに萼、花弁、雄蕊の中にさらに萼、花弁、雄蕊のある二重構造のものも見られ、これは段咲きと呼ばれる。花弁の枚数の増え方には雄蕊が花弁に変化するものと、花弁や雄蕊そのものが倍数加する変化が見られる。
花の付き方と見分け方西欧と北米の分類法ではサクラと同じスモモ属となるモモやウメは花柄が短く枝から直接生えているかのように咲くが、サクラとスモモはこれらと違って長い花柄を持っており枝から離れて垂れ下がるようにして咲く。さらにスモモの特徴として前年に葉が有った葉痕の基部に2つか3つの冬芽がつくが、サクラは1つの冬芽が付き、これが花の集合体となる花序となり、この点でサクラと近縁の植物の見分けが可能である。さらにサクラの中の種を見分けるには、個体差があって見分けにくい花弁よりも、種ごとの差異が大きく見分けやすい萼や花序の形態に注目する必要がある。
開花期開花期は種や地域によるばらつきが大きい。日本においては1月、沖縄県のカンヒザクラを皮切りに咲き始め、東京ではまずカンザクラなどのカンヒザクラを由来とする早咲きの栽培品種が咲き、ソメイヨシノが咲いた後の4月中旬以降にヤエザクラが咲く。北海道のオオヤマザクラは5月に花を咲かせ、標高2000m以上ではタカネザクラが7月に花を咲かす。
日本の代表的な品種のソメイヨシノでは、開花から満開まで1週間で、満開から散るまで1週間、花の見頃は悪天で早まらなければ満開前後の1週間程度である。ソメイヨシノはクローンであるため同じ環境にさらされる同地では個体ごとの差異がほぼなく、ほぼ一斉に咲き一斉に散る。なおソメイヨシノが爆発的に植えられる前の江戸時代までの日本では、遺伝的に個体差のあるヤマザクラや多様な栽培品種が花見の主流であったため、個体ごと、種ごとに少しづつ次々と咲いていくサクラを長い期間をかけて鑑賞していくという花見のスタイルであった。
サクラには花と葉が同時に展開する種が多くあるが、日本の野生種の中ではエドヒガンが例外的に葉が展開する前に花が咲く特質を持っており、エドヒガンから誕生した栽培品種のソメイヨシノやシダレザクラもこの特質を受け継いでいる。エドヒガンは他の多くの野生サクラや昆虫の活動期より少し前に花を咲かせるが、他に開花している種が少ないため効率的に虫をおびき寄せることができ、これが生存戦略となっている。
サクラは花芽を作ると葉で休眠ホルモンを作って休眠する。その後に休眠解除(休眠打破)して再び開花するには、一般的に5℃程度の低温刺激が望ましく、低温時間の積算とその後の気温の上昇が必要である。この工程は一般的には冬から春にかけて行われることが多いが、秋に何らかの影響で葉がなくなった場合などに休眠ホルモンが足りず、寒い日を2 - 3日経てその後小春日和になるとこの条件を満たしてしまい狂い咲きが起きる。このように異常な個体の狂い咲きとは別に、毎年春に加えて秋から冬にかけて花を咲かせるジュウガツザクラやフユザクラなどの二季咲きの品種もある。
サクラが以前に比べ若干早く咲く現象も見られている。これには休眠解除の一要素である気温の上昇が、地球温暖化の影響により春の早いうちに到来していることや、都市部でのヒートアイランド現象も影響している。また、九州では桜前線(ソメイヨシノ基準)が、普通とは逆に南下する例も現れた。これは温暖化によりソメイヨシノにとっては冬が暖かくなりすぎた九州南部では、休眠解除の一要素である低温刺激とその積算時間の条件を満たすまでに日数がかかり開花が遅れているからである。これらは季節学的な自然環境の変化を端的に表す指標にもなっている。
花の蜜サクラの花からは蜜が出ているため、サクラの花が咲く時期にはスズメ、メジロ、ヒヨドリなどの鳥類が見られる。メジロやヒヨドリは嘴を花に入れて蜜を吸うことが多いが、スズメは嘴が太くて短いため花の横から穴をあけて蜜を吸うことが多い。
日本人とサクラ
花見と栽培品種開発の歴史
日本においてはサクラは、関心の対象として特別な地位を占める花である。日本では固有種を含んだ分類学上の10もしくは11種(species)の基本の野生種を基に、これらの変種(variety)以下の分類を合わせて100種以上の自生種があり、さらにこれらから育成された栽培品種(cultivar)が少なくとも200種以上あり、名前が付けられている品種は800種類存在すると言われている。なおこのうち100品種余りは北海道松前町由来のマツマエハヤザキなどを掛け合わせるなどしてベニユタカなどの多品種を生み出した浅利政俊が作出したものである。
日本では果実(サクランボ)を食用とするほか、花や葉の塩漬けも食品などに利用されるが、特に平安時代の国風文化の影響以降に、桜は観賞用途(花見)で花の代名詞のような特別な位置を占めるようになった。当初は鑑賞の対象とされる代表的な品種は野生に自生するヤマザクラであった。これに加えて、花弁の数や色、花の付け方などの観点から見栄えが良かったり突然変異の珍しい特徴を持つ野生の個体を何世代にもわたって選抜育種し、優れた個体を接ぎ木などの方法で増殖させることで様々な栽培品種が開発されて、花見に利用された。
文化・文献におけるサクラの歴史
桜は春の象徴、花の代名詞として和歌、俳句をはじめ文学全般において非常によく使われており、現代でも多くの音楽、文化作品が生み出されている。
古来から桜は穀物の神が宿るとも、稲作神事に関連していたともされ、農業にとり昔から非常に大切なものであった。また、桜の開花は、他の自然現象と並び、農業開始の指標とされた場合もあり、各地に「田植え桜」や「種まき桜」と呼ばれる木がある(あった)。これは桜の場合も多いが、「桜」と名がついていても桜以外の木の場合もある。
奈良時代の『万葉集』には桜を含む様々な植物が登場するが、中国文化の影響が強かった当時は和歌などで単に「花」といえば唐から伝来したばかりの梅を指していた。万葉集においては梅の歌118首に対し桜の歌は44首に過ぎなかった。2019年5月1日からの元号である『令和』も万葉集にある梅花の宴が典拠となっている。
サクラの地位が特別なものとなったのは平安時代であり、国風文化が育つに連れて徐々に桜の人気が高まり「花」と言えば桜を指すようになった。
安土桃山時代の豊臣秀吉は醍醐寺に700本の桜を植えさせ、慶長3年3月15日(1598年4月20日)に近親の者や諸大名を従えて盛大な花見を催したとされ、これは醍醐の花見として有名である。
江戸時代の代表的俳人・松尾芭蕉は、1688年(貞享5年)春、かつて奉公した頃のことなどを思って「さまざまの事おもひ出す桜哉」と句を詠んだ。俳句では単に「花」といえばサクラのことを指し春の季語であり、秋の月、冬の雪とともに「三大季語(雪月花)」である。
明治時代以降では瀧廉太郎の歌曲『花』などが有名である。長唄『元禄花見踊』も明治以降の作であるがよく知られている。
日本と日本人の精神性を象徴する花
桜では開花のみならず、散って桜吹雪が舞う「雅」な様を現した。一部では散り行く儚さや潔さも、愛玩の対象となっている。古くから桜は、諸行無常といった感覚にたとえられており、ぱっと咲き、さっと散る姿ははかない人生を投影する対象である。
日本では国花が法定されておらず、天皇や皇室の象徴する花は菊であるが、特に明治時代以降はサクラが多くの公的機関でシンボルとして用いられており、「事実上の国花」のような扱いを受けている。
明治時代以降はサクラは日本の象徴として国際親善にも利用されるようになった。全米桜祭りで知られるアメリカ合衆国のポトマック河畔の桜も日米友好のために東京市長の尾崎行雄が寄贈したものである。なお、この返礼として日本にはハナミズキが贈られている。その他の国との間でも友好のために贈ることがある。
日本国外でのサクラ
アジア
中国中国では、サクラの起源は中国であるという間違った言説が蔓延している。これは、中国におけるサクラの人気の急激な高まりとナショナリズムが影響していると考えられる。しかし、多くのサクラは日本固有種のオオシマザクラなどを核にして作出されているため、中国側の主張は誤りである。
台湾台湾には、北部の陽明山・中正紀念堂公園など、中部の阿里山・日月潭九族文化村など、南部の烏山頭ダム風景区など、桜の名勝は多い。
韓国韓国では、日本統治中にソメイヨシノが導入されサクラ観賞の文化が始まった。韓国ではソメイヨシノの正体は済州島原産の雑種である王桜であるという韓国起源説が蔓延しているが遺伝子研究により事実無根として否定されている。
北朝鮮北朝鮮でも、平壌の街路には桜が植えられていて、通行人の目を楽しませる。
アメリカ大陸
アメリカ合衆国ワシントンDCの全米桜祭りが有名であり、日本が日米友好の証として寄贈したサクラに起源がある。
ブラジル日系移民が多いブラジルでは、サンパウロのカルモ公園に、日本のの桜が4,000植えられていて、桜祭りがある。
ヨーロッパ
ヨーロッパには、観賞に適した大きな花をたくさん付ける野生のサクラの種はあまりない。そのため、日本のサクラは欧米各国に収集され、観賞の文化が発展した。
イギリス1993年に日本花の会は王立ウィンザー大公園に松前系の58品種のサクラを寄贈し、それらは王立キューガーデンなどに分与され活着している。
ドイツ1977年から3年に渡って日本花の会がハンブルグ市の日本人会の依頼を受けて5,000本のサクラの苗木を同市に寄贈し、それらのサクラはアルスター湖畔や公園に植えられた。
フランス日本花の会が1981年にベルサイユ市にサクラの苗木を5,000本寄贈し、それらは市内の病院や公園などに植えられた。
ロシアロシアでは、モスクワの中心部にあるロシア科学アカデミー植物園の日本庭園に日本から贈られた北海道産のエゾヤマザクラとチシマザクラが40本ほどあり、通常5月に開花する。
「さくらの日」
日本さくらの会は、1992年(平成4年)に3月27日を「さくらの日」と制定している。
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